四角いマイクとズンドコ節と、あの頃の自分へ

家族

小さなバスの中にあった、あたたかな歌の時間

 

まだ小学校の低学年のころ。

ランドセルが自分の体より大きく見えて、バスの座席に座ると足が宙に浮いてしまうような時代です。

バス旅行の日の朝は、いつもより空気が澄んで感じられました。

早起きして母に「忘れ物ない?」と何度も聞かれ、玄関を出ると、ひんやりとした空気が胸にすっと入っていく。

その瞬間だけで、“今日は特別な一日だ”と子ども心に思えてくるのです。

当時の観光バスには、いまのように座席ごとのマイクはありませんでした。

長いコードのついた四角いマイクが一本だけあって、前の席から後ろへ、順番に手渡されていきました。

そのマイクを握ると、思ったより重くて、角ばった形が指に当たる。

その感触を、なぜか今でもはっきり覚えています。

歌詞が画面に出る時代ではありませんから、覚えているところだけ頼りに、たどたどしく歌う。

歌詞が飛んでも、まわりの子がくすっと笑うだけで、それすら楽しかった。

自分の番が近づくと胸がそわそわしてきて、

手に渡された四角いマイクの重みが、なんとも言えずうれしかったものです。


 

ドリフターズとズンドコ節の時代

 

あの頃、家のテレビにはいつもドリフターズがいました。

家族みんなでちゃぶ台を囲んで、白黒の画面に映る賑やかな舞台を見つめていた記憶があります。

セットがガラガラと動く音も、演奏する音も、そのまま聞こえてきて、

生放送ならではの“ドタバタした温度”が、家の中にそのまま流れ込んでくるようでした。

番組が始まると、

「♪いやじゃありませんか…」とコミカルな出だしの歌が流れてきて、

あのテンポに合わせて家の空気がふっと明るくなる。

そんな時間が、毎週のようにありました。

学校でもドリフの話題は尽きず、

誰かが荒井さんの「なんだバカヤロー!」を真似したり、

ズンドコ節を口ずさんで笑いあったり。

その空気が、そのままバス旅行にも持ち込まれていたのです。

マイクが回ってくると、

「ドンドン、ズンズンズンドコ♪」

その一声だけで、周りがわっと笑う。

歌うことが遊びそのものだった、あの純粋な時間が今も心に残っています。


 

明星の歌詞ブックをめぐる、小さな冒険

 

その頃の私は、とにかく歌が好きでした。

テレビの前で口ずさんだり、覚えてもいない歌詞を適当に作って歌ってみたり。

当時、「明星」や「平凡」という雑誌には、分厚い歌詞ブックが付録でついていました。

あれは宝物でした。ページを開くたびに紙の匂いがふわっと広がって、

見たことのない歌手の名前や曲名がぎっしり並んでいる。

指でなぞりながら「いつかこの歌も歌いたいな」と思っていたものです。

ある日、どうしてもその歌詞本が欲しくて、ばあちゃんに「買いに行きたい」とお願いしました。

近所の雑貨屋に連れていってもらったものの、棚にあったのは付録なしの号ばかり。

「これじゃないんだよ…」

子どもなりに本気で落ち込み、ばあちゃんを困らせてしまいました。

それでもばあちゃんは「また今度探しに行こうな」と優しく言ってくれた。

当時はその優しさに気づけなかったけれど、今になってその言葉のあたたかさが胸にしみます。


 

時代が変わっても、歌う気持ちは変わらない

 

月日は流れ、紙の歌詞ブックは姿を消し、スマホひとつで歌詞を検索できる時代になりました。

便利になった反面、あの雑貨屋で棚をのぞき込んでいた時間や、

四角いマイクの重みが、どこか特別な宝物のように思えてきます。

そんな中で、孫がちょうど昔の私と同じ年ごろになりました。

最近はユーチューブの歌に夢中で、画面に顔を近づけながら何度も巻き戻しては歌を覚えています。

「じぃじ、一緒に覚えよう!」

そう誘われて、一緒に口ずさむと、

自分ひとりでは出会わなかった歌が、ふいに生活の中へ入ってきます。

間違えても気にしない孫の姿を見ていると、

――歌の楽しさって、時代が変わっても本質は同じなんだな。

そんな思いが静かに広がっていきます。


 

今日も続く、変わらない幸せ

 

世の中は大きく変わりました。

テレビからスマホへ、紙からデジタルへ。

便利になった分、昔の“あの不便さ”がどこか愛おしくなることさえあります。

孫が歌っているのを聞いていると、

観光バスで四角いマイクを握っていたあの小さな自分が、

そっと心の中に顔を出します。

派手なことがなくても、

こうして世代を越えて歌が受け継がれていく。

――それこそが、人生でいちばん静かな、そして確かな幸せなのかもしれない。

そんなことを思った週末でした。

そういえば最近、昔の音のあたたかさが恋しくて、

昭和レトロ風のラジオをひとつ部屋に置いてみました。

見た目は懐かしいのに、Bluetoothで今の曲も流せるので、

昭和の歌も、孫の好きな歌も、ひとつで楽しめます。

部屋に置いておくだけで、ふっと昔の空気が戻ってくるようで、

そんな時間がまた、小さな幸せになっています。

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